「ねぇ、僕のことどう思う?」
「どう思う、とは?」
「其の侭だよ。どう感じているか、どう見えているか、君には。」
「相変わらずな答えしか出ませんが。」
「”不真面目、お茶目、明るい、悪戯好き、あくどい”?」
「そうですね。最近は最後のがよく目立ちますが。」
「へぇー、そうかなぁw」
「そうですよ。」

ほら、やっぱり君は。





僕が欲しかった言葉はいつも頭上高く手が届かない。





白いホイップクリームも、甘い甘いピンク色のスポンジも。
全て、”彼女”が嫌うモノで。
あ、適度なホイップクリームはアリだっけ?
じゃ、もっと増やそう。
そんなことを考えている、今。
これも、悪戯の一つ。
台所から漂う臭いに、今頃”彼女”はしかめっ面だろう。

「だけど、気にしないww」
「気にしなさい。」

隣に立って、眉を顰めるのは、紅華。
僕の、”友人”であり”同居人”。

「うーん、やっぱりあとチョコレートクリーム要るよねぇ?」
「要りませんよ、それに、彼女が嫌がります。」
「もう、手遅れだと思うんだw」
「・・・そうでしたね。」
「じゃ、キャラメルクリーム出してきてw」
「・・・チョコレートクリームでは?」
「キャラメルの方が甘いからさーw」

君は溜め息をついた、短く、無表情に。
どうにでもなれって心境なのかな。
匙を投げたようで、大人しく、キャラメルクリームを持ってくる。
勿論、気を利かせてチョコレートクリームも、なんて無い。
(まあ、ある意味”彼女”に対して、気を利かせているのだと思うけど。)

「シュリラ、喜ぶかなぁw」
「すぐにお兄さんを呼ぶでしょうね。」
「やっだ、ブラコンw!?」
「・・・・聞こえてないといいですね、彼女に。」

”彼女”、シュリラに聞こえるように言ってるんだけど。
それにあえて気づかないフリをする、君。
ダイニングの方からは、嫌な空気が漂う。
そして、廊下を駆けて行く、足音。
逃げているのは、ゲームでもしていた叶かヤンあたりだろう。

「”どうしてそういうことは、シュレルに任せないの?”」
「言いそうですね・・・分かっているなら、やめたらどうです?」
「嫌ーwww」

言葉に嗤いが含まれる度、聞く者はきっと不快な思いをするのに。
どんなポーカーフェイスで其れをスルーしているのか、君に問いたい。
心の顔さえ、君は無表情な気がして。

「ねぇ、僕のことどう思う?」
「突然、何ですか、今度は。」
「いやさぁ、こういうことにいつも付き合わされてる身として、何か思わないのかなって。」
「特に、思いませんね。」
「んー、嘘でしょw」
「・・・・・分かっているなら、聞かないで下さい。」

ほら、やっぱり君は。
疲れた顔をしないで、呆れた顔をして。
飽き飽きしました、という素振りだけする。
そんな、嘘、僕だって分かるのに。
それとも。

「ねぇ、ねぇ、どう思うの?」
「具体的にどう思う、とは?」
「其の侭だよ。どう感じているか、どう見えているか、君には。」
「相変わらずな答えしか出ませんが。」
「”不真面目、お茶目、明るい、悪戯好き、あくどい”?」
「そうですね。最近は最後のがよく目立ちますが。」
「へぇー、そうかなぁw」
「そうですよ。」

いい加減にしなさい、と静かに言う君。
唯、其の言葉に威力は無く、僕を止める気も見られない。
現に今、キャラメルクリームを持って来たじゃないか。
匙を投げたじゃないか。
答えはいつも、変わらない。
行動もいつも、変わらない。

「他には無いんだねぇ。語彙力の限界?」
「かもしれません。」

僕をそこまで思っているわけじゃない、って答え、出てこないのかな。

「さぁて、出来た!」
「持っていく気ですか。」
「あったりまえじゃーんwそのために作ったんだよww」

さあ、止めて。

「止めてあげなさい。」
「嫌ーw」

そんな言葉じゃなくて。

「仕方ありませんね。」

溜め息をついて、またも、傍観に入る。
ね。
いつも欲しい言葉は、発してくれない。
いつも欲しい言葉は、君の中の語彙で足りるというのに。

「シュリラーw」

追いかけてよ。
そして、一言言えばいいんだ。
そうすれば、こんなことも止める。
そして僕は、泣いてしまうんだろう。
悲しさと、嬉しさで。
いい加減にして、って言いたいのは僕なのに。
其れすら君は分かっていて、言わないのか。
心から、瞳を見て、言えばいい。
そんな難しいことじゃない。





ねえ、そんなに、僕はまだ君に嫌われないの?





「いい加減にしなさい、要らないといってるのよ?」
「いいじゃーん、美味しいよ?」
「貴方が食べなさい。」
「嫌、これは、シュリラ専用!」
「もしもし、シュロル?ええ、すぐ来て頂戴。甘いものよ。」
「わぁーん、また呼んだー!」
「当たり前よ、私は食べられないもの。」

後ろからの傍観の視線。
電気を消したせいで真っ暗なキッチンに、血のような糸が映える。
紅い瞳が此方の光を反射して、鋭く光る。
なのに、君の心は鈍いまま。
(僕の、思い過ごしでなければ、だけど。)
君は影のようで、いつも付き纏う。
影は僕を拒否しない。
唯、見るだけ。
影は僕に付き合わされる。
それでも、拒否しない。
最終的に、影に利点なんて無い。
害しかない。
僕の闇を吸収しなければならない。
僕に光を生み出さなければならない。
それが、例え一般から見て闇であったとしても。
其れを光にしなくてはならない。

ね、まだ?
まだ本当の答えを言ってくれないの。
今言った答え、嘘なんでしょ?
嘘って言ってよ。
嘘ですよ、って。

「紅華ー!シュリラがまた食べてくれないーw!」
「嬉しそうに何言ってるんですか。」
「わぁーん!」
「はぁ。」

よしよしって、明らかに面倒そうに頭を撫でる君。
何をすれば、構って貰えなくなる?
何をすれば、疲れて拒絶してくれる?
何をすれば、嫌ってくれる?

僕は君に嫌われたい。
こうして僕を拒絶しない住人にも。
だけど、一番は君。
一番、嫌われたい人。
ねぇ、早く言ってよ。
簡単な言葉じゃないか。
大嫌いって。
大嫌いですよって。
無表情に、拒絶してくれればいい。





ねぇ、それでも、きっと。
嫌われたら、僕は生きていけないんだろうって思う。
詰まるとこ、僕は死にたがりなのかもしれない。
この世に飽き飽きして、もっと楽しいことを探す、愚かな心の死にたがり。
ねえ、死ぬんだったら。
もしも、君が僕を嫌いになったら。
(もしかしたら、もう、嫌いで、唯、僕に言わないだけかもしれないけど。)





君が僕を殺してね。
(其の言葉で、僕を殺して。そうすれば、きっと、僕は天に届くから。)





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第二弾、虚白と紅華。
好かれたい、嫌われたい。
紅華に対し、相反する心を持つ、虚白。
B/Lでもいけんじゃないかって、最近思い始めた、どーしよ。

Thank you!